田螺(たにし)長者の不思議な才能

あるところに子供のいない夫婦がおりました。
夫婦は子供が欲しく恵んでくださるように、毎日村はずれの観音さまにお願いします。
すると、ある日おかみさんが産気ずいて子供が産まれました。
ところが、産まれてきた子供は、な、なんと田螺だったのです。
夫婦は、ビックリ しましたが、それでもこの子は、観音さまの授かりものだからと一生懸命 大切に育てます。
今も昔も子供は、宝物 お金では買えません。
この頃 子供の虐待のニュースをよく耳にしますが、本当に残念です。

20年ぐらい歳月が過ぎても相変わらず田螺のままでした。
ところが、ある日のことふとしたきっかけで、馬の耳元で馬に囁くことで馬を上手に操るという才能を発揮します!
それからは、馬による荷運びを手伝うようになりました。
その事が、評判になります。
ちょうど庄屋さまに年貢を納めるために米俵を乗せた馬を、息子の田螺が操りながらやって来ます。

その姿をみた庄屋さんは、感心したり感激したりですっかり田螺のことが気に入ってしまいます。

庄屋さんは、「自分の娘婿になって欲しい」 と田螺にたのみ田螺も心よくOKしました。

ところが庄屋さんの娘は姉妹です。
お姉さんの方は、田螺なんか気持ち悪いと嫌がっておこってしまいます。
でも妹はちがいました。
「観音さまからの授かりものならきっと良いことがあるでしょう」と田螺のお嫁さんになりました。

庄屋さんの娘は、田螺や田螺の両親と一緒に暮らし、それはそれはよく働きました。
一年が過ぎた頃くらしもだいぶ楽になりました。
ある夏祭りの日に田螺と嫁さんは一緒に出かけるのですが、お嫁さんが、観音さまにお願いがあるからと田螺を田んぼのふちにおいて姿を消します。

それを見ていたお姉さん、妹のいつも幸福そうな姿に嫉妬をしてました。
田螺の好きな餌をまいて、たくさんの田螺を、田んぼから集めます。
そこでこんどは、「カラス出てこい田螺がいっぱいいるぞ~」とカラスを呼ぶとカラスがやって来て田螺をつっつき始めました。
こりゃ大変!ちょうどその時お嫁さんが、戻ってきて田螺の上に這いつくばって田螺を守ります。
すると観音さまへのお願いが叶ったのです。お嫁さんの帯の下の田螺が、大きくなり立派な青年になったのでした。

その後二人である商売を始めるのですが、田螺の亭主の話が噂になりお店は大繁盛
やがて周りから田螺長者と言われるようになりました。

田螺って今の時代あんまり馴染みがないような気がしませんか?
でも、昔みんなが田んぼでお米を作っていた時代には、すごく身近な存在で愛着があったんでしょうね。
かの北大路魯山人は田螺が好物だったんですって。

貧乏に負けず一生懸命生き抜いて幸福になるっていう昔話って多いです。
子供がほしくても授かることができず神様にお願いするとか、貧乏だったのが、お金持ちになり幸せにくらすとか、今も昔も人間の本質は、変わらないもんなんですかね。
昔から [金持ち=幸せ] というイメージが出来上がっているのも、おかしい気もするのですが・・・・

 

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