笠地蔵はぜひ子供に話してあげたい!

雪がいっぱい降るある所に、ひどく貧乏なお爺さんとお婆さん夫婦が暮らしていました。

12月になりもうすぐお正月だというのに、お餅もかえません。
そこでお爺さんは街に出て、毎日作ってきた笠を売ろうと考えます。
背負えるだけ背負って街に行き笠を売ろうとするのですが、なかなか思うように売れません。

雪がふり吹雪になる気配がしてきたので、残念ながら笠を売る事をあきらめてお婆さんの待っているお家に帰ることにしました。

(ここでいう笠は、傘じゃなくって雨や雪、直射日光などが当たらないように頭に被る大きな円錐の帽子のようなもので、材料は、い草や竹皮 檜やイチイの木の皮を薄くけずって編み込む などその地方によって色々あったようです)

がっかりしていたお爺さん、吹雪の中の帰り道で7人のお地蔵さまを見かけます
頭に雪が降り積もり見るからに寒そうなお地蔵さん。
可哀想でほっとけなくなり頭に降り積もったゆきを払いのけているとふと思いつきます。
「そうだ売れ残っている笠がある」これを被せてあげれば少しでも寒さしのぎになるだろう!

お爺さんは、一つまた一つ(なんか小田和正の歌の歌詞にありましたネ)とお地蔵さんに笠を被せていきます。
6人目のお地蔵さんに笠を被せ終わって気が付くと最後の一人のお地蔵さんの笠が足りません。
しばらく考えこんでいましたが、これでお許し下さいと持っていた手ぬぐいをお被せして何も持たずにお婆さんの待っている我が家に帰りました。

家に帰ってお婆さんにその話をすると、「それは、良いことをしましたネ」とお婆さんも喜んでお餅がなくても夫婦でとても幸せな気持ちになりました。

その夜お爺さんとお婆さんが寝ていると、家の外でドスンドスンと何か重たい物が落ちたような音がする!

何ごとが起きたのか、と慌てて玄関の扉を開け外の様子を伺うと、家の前は米俵やお餅 野菜 魚などいっぱいの食べ物と大判、小判の金貨が山のように積まれていました。
ふと周りを見ると笠をかぶった6人のお地蔵様と手ぬぐいをかぶった1人のお地蔵さまが、雪の降る中背を向けて去っていく姿があります。
2人は、口をポカンと開けながらしばらくして我に返り大喜でした。
この7人のお地蔵さまのおかげで楽しい新年を迎えることが出来たそうです。

他に最後の話のオチが、家に来るお地蔵さんは、1人だけとかお地蔵さまじゃなく七福神がやってくるなどがあるようです。
また贈り物を届けるのではなく、お爺さんお婆さんを極楽浄土へ送り届けるというパターンも!
仏教の教えが浸透している話なんでしょう。

全く別パターンでは、お爺さんが雪をかぶったお地蔵さんを可哀想に思い背負って帰ってくるんですが、お婆さんが、怒ってしまいます。
そうこうしているとお地蔵さんの身体からお米があふれ出てきたのです。
お婆さんは、欲を出しもっとお米を出そうとお地蔵さんのお腹をカッ捌いてしまいます。
するとお米は、出なくなったっていう大人向けのようなリアルな話もあるようです。

この話に出てくるお地蔵さんはいわゆる地蔵菩薩ではなく村と村 村と町などの堺の神として祀られているお地蔵さんのようです。
そういえば峠の堺や県境の道路はしには、今でもお地蔵さまが祀られている所がたくさんあります。
昔は歩いての峠越え、人々の喜怒哀楽いろんなドラマを見守ってくださっているのでしょう。

実は私の祖父(母方)も冬山の峠で雪に埋もれ亡くなっています。母がまだ6歳ぐらい、他に5人幼い兄弟がいたのでさぞかし無念だったと思います・・・・・

-昔話